住まいの 3D データを集積し、東京の暮らしを紹介するリアルとデジタル が融合した不動産屋「TOKYO [UN]REAL ESTATE」。
架空の不動産屋をコンセプトにした展覧会をシビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT] で開催しました。
TOKYO [UN]REAL ESTATE は、東京に暮らす人々の「ありのままの暮らし」を紹介する架空の不動産屋です。
東京の多種多様な住まいと暮らしを 3D スキャンで記録し、等身大の人間らしさを記録・考察することで、現代社会の特質や変化を読み解く「考現学」に取り組んでいます。
さらに、収集した 3D データは、記録としてのアーカイブにとどまらず、クリエイターが活用できるオープンデータとして提供し、新しいカタチの “ 不動産 ” と して、次世代のクリエイティブな循環に繋げます。
展覧会では、これまでに集めた東京のリアルな暮らしと多様なライフスタイルのあり方を紹介。 さらに、実在するお部屋の 3D データを活用したマンガ、ゲーム、XR、映像作品なども展示し、 デジタル時代における「部屋」というメディアの新たな可能性を提示しました。
架空の不動産屋が渋谷にグランドオープン!?
会場に入ると、大きなロゴの看板が。漢字の「不」と部屋の間取り図を組み合わせたデザインになっています。机の上のパソコンでは自由に各部屋のデータを閲覧できます。


左手には、今回集めたスキャンデータ計32件分が物件チラシ風にまとめられ、壁一面に並んでいます。
よく見ると家賃の欄がデータ容量を表すKB数になっていたり、オススメの活用方法が書かれていたりと、データを利用するクリエイター向きの表記になっています。


オリジナル封筒に気になる物件チラシを入れて、持ち帰ることもできます。
アジト部屋
会場を右手に進むと、”不”不動産の従業員のアジト部屋になっています。
お部屋のスキャンを行う「スキャナー」、データを整理し提案を行う「コーディネーター」、データを考現学の視点で分析する「リサーチャー」……彼らの日々の活動を覗き見できます。



パソコンにはクリエイターとのやり取りの痕跡が。机上は間取り図や参考資料でいっぱい。

東京の暮らしと社会環境のリサーチ年表。フリマアプリの登場やデジタルデバイスの進化と暮らしの変遷について、照らし合わせながら追うことができます。

調査規定と、収集したデータの所在地を記録する地図。左下には従業員のスケジュールボードが。

スキャナーが身に纏うユニフォーム。部屋に上がる際必須の靴下、スリッパも。
内見スペース
奥に進むと、部屋のデータをおおよそ1/1スケールで投影した内見スペースが広がります。
どんな本が並んでいるか、デスクの上には何が置かれているのか。日常の痕跡が、クリエイティブのために開かれています。


椅子に座ってゆっくり内見できます。
クリエイティブへの拡張実験室
クリエイター・アーティストたちが、使ってみた。作ってみた。
ここに並ぶ作品は、実在する暮らしのデータから生まれました。マンガの背景、ミュージックビデオのセット、ゲームのステージ、メタバースの交流空間──すべて、東京のリアルな住空間がクリエイティブに再構築されたものです。自分の暮らし、知人・友達・パートナーの暮らし。家具、痕跡、置きっぱなしのエトセトラ。
もし、映画のワンシーンに映っていたら? 人気漫画の背景になっていたら?
でも、これで終わりではありません。まだ誰も試したことのないワクワクがあるはずです。
私たちは、それを探しています。あなたなら、この暮らしのデータをどう拡張しますか?


『生活感の亡霊』
クイックオバケ (イラストレーター・マンガ家)
本作は、実在する部屋のデータをもとに、その空間がもつ物語を想像し、1コマのマンガとして描き出しました。
部屋は、その住人の人生や時間の積み重ねを映し出す小さな宇宙。家具の配置、置き忘れたモノ、壁にかかったポスター。そうした何気ない要素が、語られぬストーリーの手がかりとなり、見る人の心に新たな物語を生み出す試みです。


『幽限会社わらし不動産 体験版』
高橋 祐亮 (Studio 非 ) + 石原 航 (Studio 非 )
現代の座敷わらしが不動産で部屋を探す一人称視点ゲーム。新米の座敷わらしである主人公は取り憑く部屋を求めて「わらし不動産」を訪れる。
しかし、部屋を借りるためには十分な「座敷わらし力」が必要であると教えられる。「座敷わらし力」は、内見した部屋の状態から家主のことを正確に読み取る能力によって測定される。主人公は「座敷わらし力」を上げるために、内見と試験を行うことになる。
順調に「座敷わらし力」をあげていく主人公であったが、とある部屋に足を踏み入れた際に違和感を覚える。内見を進めていくうちに、その部屋はかつて自身が住んでいた部屋であることを思い出す。そして、そこから物語は転調していき・・・。

『キメラシェアハウス』
oji_chang / 清水 岳 (MESON プランナー )
キメラシェアハウスは、友人から LiDAR スキャンやフォトグラメトリで 3D データ化した部屋や物を集め、メタバース上にバーチャルシェアハウスを構築する個人プロジェクトです。現実の部屋を互いに持ち寄り、招き合うことで、互いのパーソナルな部分を共有します。限られたメンバーとその友人のみが入れるプライベートな場とすることで、実際のシェアハウスのような繋がりをバーチャルに再現し、そこから新たなコミュニティが生まれることを目指しています。

『MashRoom ─誰かの生活をマッシュアップする』|
石原 航 (Comicaroid 開発者 / アーティスト / ハッカー ) + ワークショップ参加者の皆さん
収集したお部屋の 3Dデータを活用し、マンガ創作を実践するワークショップを1月に開催。本ワークショップでは、部屋の3Dデータから物語を考え、空間描写を生かしたマンガ制作に挑戦しました。参加者は、デザインツール「Comicaroid(コミカロイド)β」を使用し、お部屋の3D データをマッシュアップすることで、実在する部屋を舞台にした漫画のワンシーンを創作しました。
“誰かの部屋”という生活メディアから、どのような物語性が引き出されていくのか。
その可能性を探る実験と創作プロセスをご覧ください。
*Comicaroid(コミカロイド)
お部屋の 3Dデータなど、様々な素材を取り込み、組み合わせる(マッシュアップする)ことで絵を描かずにマンガを作成できるツール。

『[UN]Noclip』
大澤 利己 (Artist / Designer / Sound Creator / Art Director)
部屋というフィルターを通して音をビジュアライズするMusic Videoです。まず生活音のサンプリングを使用して楽曲を制作、数々の部屋のデータを連結させた巨大な“キメラ部屋“の中を楽曲に合わせ縦横無尽に進んでいきます。ドアからドア(または窓)という条件のみで連結したルートをどうMusic Videoという枠の中に落とし込み、体感して頂けるか思考しながら制作しました。壁を通過していく決められたルートでありながら、偶発的に組み上がった全体像が完成しました。
トークイベント「東京宅話」
会期中には「東京“宅話“」と題したトークイベントを開催。
「ポスト家族」という生活単位で暮らす土とデジタルのはしかよこさん、モバイルハウスを手がけるSAMPOの塩浦 一彗さんをゲストにお招きし、シェア文化やコミュニティとしての居住空間について”宅話”しました。

特設サイトもオープン!
今回スキャンしたお部屋データはこちらの特設サイトより閲覧できます。
引き続きスキャンデータの募集も行っているので、気になる方は是非ご覧ください。
あなたなら、この暮らしのデータをどう拡張しますか?
特設サイト >>> https://unrealestate.mvmnt.tokyo
【開催概要】
展覧会『 TOKYO [UN]REAL ESTATE 』
会場 : シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT](東京都渋谷区宇田川町3−1 渋谷東武ホテル 地下 2 階) 会期 : 2025 年 2 月 28 日(金)〜 3 月 9 日(日)※月曜定休日
時間 : 13:00 〜 19:00
入場料:無料
主催:シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT]
企画・制作: MVMNT(原 亮介、瀬賀 未久、山田 麗音、岡本 かなは、佐藤 玲)
ロゴ・VI・グラフィック: 田村育歩
リサーチ・店舗デザイン:studio TRUE ( 松岡 大雅 + 寺内 玲)
アジト部屋・内見スペース/映像制作: 淺田 史音
アタック映像/サウンドデザイン: 大澤 利己
映像撮影:高橋 理佳子
スチール撮影:竹久 直樹
展示作品
『生活感の亡霊』クイックオバケ
『幽限会社わらし不動産 体験版』Studio非( 高橋祐亮 + 石原 航 )
『キメラシェアハウス』oji_chang / 清水 岳
『[UN]Noclip』 大澤 利己
『MashRoom─誰かの生活をマッシュアップする』 石原 航 + ワークショップ参加者の皆さん
プログラムマネジメント: 廣田 ふみ、 伊藤 隆之
テクニカルマネジメント: イトウ ユウヤ
テクニカルディレクション:田部井 勝彦
運営マネジメント:吉良 穂乃香
スキャンアドバイザー: 岩間 輝
映像制作アドバイザー: 中上 淳二
VR展示アドバイザー: Discont
特設ウェブサイトデザイン: 堤 大樹、山本洋平 、伊藤 友美
スキャンに協力いただいたスキャニーの皆様32組