MVMNT imkp Lab. トークイベント
“こんにちは、SFレスキュー”
SFにリアリティを求め、設定の整合性や科学的根拠を重視する「SF警察」という視点は、未来を考えるうえで大切なフィルターのひとつです。しかし、わたしたちMVMNT imkp Lab.は、そこにもう一つのアプローチを加えたいと考えています。
それが「SFレスキュー」という考え方。
たとえば、一見すると科学的に無理そうに見える未来のビジョンに対しても、「なぜそれが必要なのか?」「どうすればそれが可能になるのか?」と問い直し、そこに至るまでの道筋を想像力を駆使して描き出す。
SFレスキューは、既存のリアリティに照らして評価するのではなく、まだ見ぬ未来を想像し、その可能性を後押しする姿勢です。SFの飛躍した発想に寄り添い、そこから積極的にインスピレーションを得て、現実と接続する方法を探ります。
OUTLINE
◆日程:2024.08.08(Thu)
◆時間19:00-21:30 ※開場:18:45
◆会場:FabCafe Tokyo (東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7)
◆参加費: 無料
◆主催: 株式会社ロフトワーク/MVMNT
About
あなたはSF警察?それともSFレスキュー隊?
新しい未来とマッチングするための10の選択
みなさんは”SF警察”という言葉を聞いたことはないでしょうか?
SF警察(サイエンスフィクション警察)というミームは、主にサイエンスフィクションやファンタジー作品のファンやクリエイターの間で囁かれる言葉です。彼らは、SF作品や未来のヴィジョンに対して、リアリティを大切にする人たちです。物語の中で登場する科学や技術が、現実の知識と相違があれば、丁寧にその矛盾を指摘してくれます。「SF警察」とも呼ばれる彼らのまなざしは、ときに夢の世界に現実の制約を持ち込むように映るかもしれません。
しかし、見方を変えれば、それは未来の物語に“納得感”や“手触り”を与えるための大切な補助線でもあります。私たちは、飛躍した発想やまだ誰も見たことのない世界を描き出すとき、その世界をより多くの人に届けるために、こうしたリアリティの視点と向き合う必要があります。「本当にそんな未来が来るの?」「どうすればこの技術は実現する?」——そうした問いは、創造を妨げるものではなく、未来を具体化するための対話の入口なのです。
ただ、その“現実とのすり合わせ”が目的になりすぎてしまうと、せっかく芽生えた想像力が閉ざされてしまうこともあります。SFを現実に引き寄せるだけでなく、現実を少しだけ非現実に引き寄せてみる。その往復運動こそが、今、わたしたちに必要な態度なのかもしれません。
このイベントでは、SFプロトタイピングの取り組みの中でよく出会うシチュエーションを題材に、10の選択肢を通じて、参加者と一緒に“未来とのより良い付き合い方”を探っていきます。
科学的な整合性や現実味への問いかけ——通称「SF警察」とも呼ばれる視点は、私たちが想像した未来に立ち止まりを促す存在です。しかし、それは創造性を止めるものではなく、むしろ未来をより深く考えるためのきっかけでもあります。
この交流を通して、飛躍した発想と現実との間を行き来しながら、新しい未来と出会うための実践的なアイデア発想法を体験してみましょう。
ありふれた未来を書き換える、SFプロトタイピングとは
「SFプロトタイピング」とは、SF(サイエンスフィクション)の発想・世界観・ストーリーテリングを活用することで、アイデアを飛躍させ、革新的なビジョンを導き、今後あり得るかもしれない未来の姿を構想・試作することができる手法です。物語の力を活かし、他者と未来像を議論・共有し、未来の価値創造のヒントや先端技術の活かし方を探る手法として注目されています。
イノベーティブな未来を描くために、
世界を書き換える「ストーリー」の作り方と使い方
本イベントでは、MVMNT imkp Labのコラボレーションパートナーであるアーティスト・ハッカーの石原航氏とアーティスト高橋祐亮氏が参加した大手自動車メーカーのSFプロトタイピングプロジェクトの担当者を招待し、SFプロトタイピングのプロジェクトに携わってきた経験やプロジェクトの運営方法をお聞きしながら、ありふれた未来像を壊し、真にイノベーティブな未来を、いつでも、いくつでも、気軽に、誰もが語れるようになる方法を解説します。
また、ロフトワークがこれまで手掛けてきたSFプロトタイピングの実例や、MVMNT imkp Lab.で取り組んでいるSFプロトタイピングの新しい表現の可能性もご紹介します。
登壇者は、SF作家、SFプロトタイパー、アーティスト、ハッカー、サウンドアーティストまで様々。SFを軸に、領域を横断しながら古びた未来を書き換える手法についてディスカッションします。
PROGRAM
19:00 – 20:00
第1部:トークセッション
SFプロトタイピングのプロジェクトを取り上げながら、昨今のSFプロトタイピングを振り返ります。企業で実践することでの学び、障壁など様々なお話を特別ゲストをお招きしてご紹介します。
<登壇者>
人間六度(SF作家)
石原 航(アーティスト / ハッカー/ MVMNT クリエイティブパートナー)
高橋 祐亮(アーティスト / MVMNT クリエイティブパートナー)
丸山翔哉(MVMNTプロデューサー /サウンドアーティスト/ imkp Lab.所長)
+特別ゲスト
20:00 – 20:05
休憩
20:05 – 21:15
第2部:参加型ディスカッション
SFプロトタイピングの取り組みで頻繁に起こるケースを題材に、まだ見ぬ未来とマッチングするための10の選択について、SFプロトタイピングのクリエイター、企業関係者、そしてオーディエンスを巻き込んだ参加型ディスカッションを行います。
こんな人におすすめ
- SFの考え方を学び、作品制作に活かしたいと考えているアーティストやクリエイター、漫画家など
- 様々な領域のアーティストやクリエイターと共に、クリエイティブなアイデアを生み出したいと考えている方
- ビジネスでSFプロトタイピングの活用を検討している方
Speaker

Ningen Rokudo
人間六度
SF作家
1995年、愛知県生。東海中学校・高等学校卒。今年春大学を卒業し、現在は専業で活動中。
「スター・シェイカー」で第九回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、作家デビュー。
2013年、急性リンパ性白血病を罹患し4年弱闘病。この期間に長編小説「BAMBOO GIRL」を執筆し、文芸社から自費出版する。のち日本大学芸術学部文芸学科に入学。
2020年、文芸思潮エッセイ賞を受賞。2021年、「きみは雪をみることができない」で第二十八回電撃小説大賞メディアワークス賞受賞。
SFプロトタイピング分野では、Panasonic「SF小説から未来の時間をヨム」にて「ゆびさきに宿る魂で」/LIXIL「未来共創計画」にて「持続可能な土塊」/DENSO「デンソージャパンモビリティショー2023」にて「バーン・コンテインド・イン・ザ・モジュール」を執筆。
また単著の発表に加え、雑誌小説すばるへの中編掲載や漫画原作なども行う。sasakur.UK楽曲「トンデモワンダーズ」や花譜・カンザキイオリ楽曲「過去を喰らう」のノベライズも務めた。
それまでの作品が切り捨ててきた細部を突き詰めて描くことが好き。『ボカロ好きSF作家』として立脚しながら、SFじゃないものも書いていきたいって感じ。パエリャは作れる。筋トレはできない。

Ishihara Ko
石原 航
アーティスト / ハッカー
慶應義塾大学総合政策学部卒業、同学政策・メディア研究科博士課程を単位取得満期退学。 「ありえるかもしれないインターネット」をテーマに様々な作品、システムを制作・開発しながら新しいアバター観やデジタルコミュニティの可能性を思索・研究中。 総務省認定異能β(総務省公認のへんなひと)保持者。Ars Electronica 2019 Future Innovatorに選出。公益財団法人クマ財団奨学クリエイター4〜5期生採択。 主な受賞歴にWIRED Creative Hack Award 2021 準グランプリ、同賞 2018 特別賞、Campus Genius Contest 2019 審査員特別賞など。

Takahashi Yusuke
高橋 祐亮
アーティスト/デザイナー
1992年生まれ。3DCGやゲームエンジンを用いた表現を中心に映像や VR 、インスタレーションの制作を行う。 Play(=遊ぶ・選択する・再生する・演じる)というワードを軸に、鑑賞者やプレイヤーが自らの固有性を想起するための拠り所となる「装置」としての作品制作を目指す。『WIRED』によるCREATIVE HACK AWARD 2017特別賞、NEWVIEW AWARD 2022 Grand Prizeなどを受賞。2023年、文化庁メディア芸術育成支援事業-創作支援プログラム-採択。慶應義塾大学SFC卒業、東京藝術大学大学院修了 。

Shoya Maruyama
丸山 翔哉
MVMNT プロデューサー/ サウンドアーティスト/ imkp Lab 所長
1994年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部を経て、サウンドアーティストとして活動。
2023年4月プロデューサーとしてMVMNTに参画。MVMNTでは主に研究開発事業やサービスデザインなどMVMNTの自主事業に携わっている。
アーティスト活動において聴取環境についてのサウンドスタディーズのリサーチから音響表現を中心に、サウンドメイキング、インスタレーション、VRの制作を行う。2022年から3DCGアーティスト、映像作家3人によるアートリサーチコレクティブIEEIRを結成し、多方面でコラボレーション制作も行なっている。主な受賞歴に令和6年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業創作支援プログラム採択、NEWVIEW AWARD 2022グランプリなど。